ソウル宣言の会
この条例は2014年5月14日に公布、施行された。(原文はソウル特別市のホームペイジに発表された文書による。)(翻訳:丸山茂樹―2014年6月1日)
ソウル特別市社会的経済基本条例
第1条(目的)
この条例は社会的経済の理念と構成主体、共通の基本原則を樹立して、関連する政策を推進することにあり、各社会的経済の主体とソウル特別市の役割について基本的な事項を規定することによって、ソウル特別市の社会的経済の活性化と持続可能な社会的経済の生態系の構築に貢献することを目的とする。
第2条(基本理念)
この条例は社会構成員の共同の人生の質と福祉水準の向上、社会経済的な両極化の解消、社会安全網の回復、協同の文化の拡散など社会的価値の実現のために、社会的経済と市場経済及び公共経済の調和をつくりあげることを基本理念とする。
第3条(定義)
この条例において利用する用語の意味は次の各号の通りである。
1 “社会的価値”というのは次の各目の行為を通じて経済的・文化的・環境的な福利水準を向上させる公的概念の効用を云う。
イ. 安定的な職業の創出
ロ. 地域社会の再生
ハ. 男女の機会の平等
ニ. 社会経済的な機会において排除される危険に置かれている社会構成員の回復
ホ. 共同体の利益の実現
ヘ. 倫理的な生産と流通
ト. 環境の持続可能性の保全
チ. その他、労働・福祉・人権・環境の次元で地域及び社会構成員の社会的・経済的・文化的・環境的な福利の増進
2 “社会的経済企業”というのは第4条の基本原則を順守する企業によって次の各項目のいずれか1つに該当する組織のことをいう。
イ.「社会的企業育成法」第2条第1項による社会的企業と「ソウル特別市社会的企業育成に関する条例」第2条第2項に定める予備社会的企業
ロ.「協同組合基本法」第2条または個別法律によって設立された協同組合または協同組合連合会(社会的協同組合、社会的協同組合連合会を含む)
ハ 「都市再生、活性化及び支援に関する特別法」第2条第1項第9号による地域(マウル)企業及びソウル特別市長(以下、“市長”という)が定めた地域(マウル)企業
ニ 「国民基礎生活保障法」第18条による自活企業、保健福祉部長官が認定した自活勤労事業団及び市長が認証した自活企業
ホ 「重症障害者生産品優先購買特別法」第9条の重症障害者生産品の生産施設
へ その他、公有経済、公正貿易など市長が定める基準によって社会的な価値の実現を主たる目的とする経済的な活動をする企業及び非営利法人または非営利民間団体など
3.“中間支援組織”という中央部処、または地方自治団体と社会的経済企業の間の架橋の役割、社会的経済企業の間の連携、社会的経済企業の支援など社会的経済の生態系の造成を支援する組織。
4 “社会的経済の当事者の連合体”とは、社会的経済企業たちが交流及び協力するために自発的に集い、結成した当事者組織を云う。
5 “社会的経済の生態系”とは、社会的経済企業の設立及び発展、市場の造成及び利害関係者の多様な参加、再生産と再投資を好循環的に成し遂げられるシステムのことを云う。
6 “社会的経済の民間ネットワーク”とは、社会的経済の当事者の連合体、社会的経済を支援する中間支援組織及び民間企業・団体たちの共同事業、相互扶助や相互取引を推進させる組織または関係網のことである。
7 “社会的経済組織”とは、第2号から4号までの包括的な組織を云う。
第4条(基本原則)
① 社会的経済企業は次の各号の基本原則によって行う。
1 組織の主な目的が社会的価値の実現
2 民主的であり参加型である意思決定構造及び管理形態を通じて個人と共同体の力量強化
3 主に構成員が遂行する業務やサービス、活動を土台にして行う経済活動によって獲得される結果を、構成員や社会的価値実現に使用するとか、その収益を資本よりも人と労働に優先して配分
4 経済の透明性と倫理性の順守など
② 市長は、社会的経済企業の支援について、細部の基準を関係する法律及び第1項の原則によってつくることが出来る。
第5条(市長の責務)
① 市長は、社会的経済の活性化と社会的経済企業間の有機的な協力と連帯が成し遂げられるように、必要な支援及び施策を総合的かつ効果的に推進しなければならない。
② 市長は、ソウル特別市(以下、“市”という)の各種の政策樹立と事業の執行において社会的経済との連携を促進するよう、該当する政策と事業が社会的価値の実現に寄与するように積極的に考慮しなければならない。
③ 市長は社会的経済の活性化と持続可能な生態系の造成のために、関連する政策の樹立、施行、評価において社会的経済企業、社会的経済の当事者の連合体などの意見が反映されるように努力しなければならない。
④ 市長は社会的経済の発展が地域住民の生活水準の向上と地域経済に寄与することが出来るように自治区と協力する。
第6条(社会的経済企業の責務)
① この条例によって支援を受ける社会的企業は、第4条の基本原則を順守して、社会的価値の実現のために誠実に努力しなければならない。
② 社会的経済企業は社会的経済の活性化について責任感をもって社会的経済主体の相互間の協業と共有、相互取引の精神に立脚して、持続可能な社会的経済の生態系の構築のために努力しなければならない。
第7条(他の条例との関係)
① 社会的経済に関しては特別の場合を除いて、他の条例に優先してこの条例を適用する。
② 社会的経済に関する他の条例を制定するとか改正する場合には、この条例の目的と原則に合致するようにしなければならない。
第8条(社会的経済の基本計画)
① 市長は、第9条の希望経済委員会の審議・議決を経て社会的経済企業の自律的な活動を促進し、体系的に支援・育成するために社会的経済の基本計画(以下、“基本計画”という)を5年ごとに樹立してこれを施行しなければならない。
② 基本計画には次の各号の事項が含まれなければならない。
1 社会的経済の活性化のための基本方向
2 社会的経済の発展戦略及び基盤造成に関する事項
3 社会的経済企業の間の相互協力及び社会的経済の政策と関連する関係機関の間
の協力に関する事項
4 社会的経済の活性化のために関連した条例と政策の改善に関する事項
5 その他、社会的経済の生態系の造成に必要な事項
③ 市長は、基本計画によって年度別の施行計画を毎年、樹立・施行しなければならない。
④ 市長は、第1項及び第3項による事業施行の結果と成果などについて評価を実施しなければならない。
⑤ 市長は、基本計画の樹立及び施行のために、社会的経済について実態調査を実施して、実体調査結果を反映させた基本計画を樹立しなければならない。
⑥ 市傘下の投資・出捐機関の長又は自治区庁長は、市長が要請した場合に第5項による実態調査に必要な資料の提供に協助しなければならない。
第9条(社会的経済の政策の審議・調整)
市長は、社会的経済の活性化及び生態系の造成など社会的経済の政策を審議・調整することにあたり「ソウル特別市希望経済委員会の設置及び運営に関する条例」において規定している希望経済委員会へ上程するものとする。
第10条(社会的経済支援センター及び部門別支援機関)
① 市長は、社会的経済の活性化及び生態系の造成のための業務を効率的に遂行するために市社会的経済支援センター(以下、“支援センター”という)を設置・運営する。
② 市長は、社会的企業、協同組合、地域(マウル)企業、自活企業など社会的経済の部門別の特性を勘案した企業育成のために、その育成業務の一部を関連条例で定めた専門性のある機関に委託することが出来る。
第11条(支援センターの機能)
支援センターは次の各号の機能を遂行する。
1 社会的経済に関連した政策の協議・調整及び社会的経済組織の総合的支援
2 基本計画の樹立の支援
3 社会的経済の人材の養成と社会的企業の発掘及び事業化の支援
4 社会的経済の活性化のための支援制度及び政策の研究開発
5 社会的経済企業間の協力支援及び業種、地域及び広域単位のネットワークの構築・運営の支援
6 社会的経済企業の設立と運営に必要な専門的なコンサルタンティング支援
7 社会的経済企業のモニタリング及び評価
8 社会的経済の活性化のための広報及び教育支援体系の構築
9 社会的経済の市場造成の支援
10 その他、社会的経済の活性化及び生態系の造成に必要な事項
第12条(支援センターの委託管理及び運営)
① 市長は、支援センターを効率的に管理・運営するために関係法規又は市長が定めた機能を遂行することが出来る与件を備えていると認定される社会的経済の関連法人や団体等へ委託して運営させるとか、別途の独立法人を設立することが出来る。
② 協同組合の設立及び運営支援についての業務を「ソウル特別市協同組合活性化支援条例」第8条に定めている協同組合の相談支援センターに委託することが出来る。
③ 自活企業の育成に関しての業務を「ソウル特別市自活事業支援に関する条例」第5条に定めている市広域自活センターへ委託することが出来る。
④ 地域(マウル)企業の育成についての業務を「ソウル特別市地域(マウル)共同体をつくることの支援等に関する条例」第22条に定めている市地域(マウル)共同体総合支援センターへ委託することが出来る。
⑤ 市長は、支援センター及び部門別の支援機関の管理及び運営に必要な経費を予算の範囲で支援することが出来る。
⑥ 第1項による細部の事項は「ソウル特別市行政事務の民間委託に関する条例」によ
り行うものとする。
第13条(経営支援等)
市長は、社会的経済企業の設立と運営に必要な統合的な経営支援システムを構築し、関係法規によって経営・法律・技術・税務・労務・会計などの分野についての専門的な諮問及び情報提供など各種の支援を行うことが出来る。
第14条(施設費等の支援)
① 市長は関係法規により社会的経済企業の設立または運営に必要な敷地購入費、施設費などを予算の範囲で支援・融資または公有地を賃貸及び無償で貸すことが出来る。
② 市長は、不用物品などを関係法規により社会的経済企業に無償で譲与することが出来る。
第15条(財政支援及び基金の設置)
① 市長は、社会的経済企業の自立のために必要であると認定された場合、予算の範囲で財政支援をすることが出来る。
② 市長は、社会的経済企業の資本調達のために関係法規により社会的金融システムを構築する事が出来る。
③ 市長は、社会的経済の活性化及び持続可能な社会的経済の生態系の造成のために社会的経済に関する基金を設置・運用することが出来る。
④ 第2項の社会的金融及び第3項の基金の設置・運用に関して必要な事項は、別に条例で定める。
第16条(教育訓練及び研究支援等)
① 市長は、社会的経済の人材養成、社会的経済の企業の設立・運営に必要な専門人力の育成など社会的経済の構成員の力量強化のために教育訓練を実施することが出来る。
② 市長は、第1項の教育訓練及び社会的経済の専門人力の養成のために市傘下の投資・出捐機関、「高等教育法」第2条による大学、社会的経済に関する研究活動などを目的とする研究所や機関、または団体を専門人力の養成機関として指定することが出来る。
③ 市長は、第2項により指定された専門人力養成機関に対して、予算の範囲で事業遂行に必要な費用の全部または一部を支援することが出来る。
第17条(優先購買等の支援)
① 市長は、関係法規により社会的経済企業において生産した財貨やサービスの優先購買を促進しなければならない。
② 市長は、民間の消費奨励などを通じて社会的経済企業が生産した財貨やサービスの販路開拓のために努力しなければならない。
③ 第2項の優先購買の促進及び販路支援の実効性を確保するために必要な事項は、別に条例で定める。
第18条(社会的経済の当事者の連合体等の支援)
市長は、社会的経済企業の設立、経営活動に関する支援及び当該部門の活性化の戦略の樹立などのために、広域及び自治区単位、業種単位を基準にして設立された社会的経済の当事者の連合体や社会的経済の民間ネットワークが民間の主導で設立される場合、必要な支援を行う事が出来る。
第19条(民間企業等の参加の拡大)
市長は、民間企業及び団体などが社会的経済企業の設立及び育成に参加することが出来るように、次の各号の事項の支援をすることが出来る。
1 地域内の社会的経済企業・民間企業・団体の交流・協力、ガバナンスの構築及び活動の支援
2 連携企業の活性化のための参加企業の支援拡大
第20条(社会的経済の活性化のための国際協力)
① 市長は、社会的経済の活性化のために国際協力のための努力をしなければならない。
② 市長は、国際社会的経済の活性化と関連した国際協力を推進するために、次の各号の業務を行う事が出来る。
1 国際社会的経済の民官パートナーシップを基盤とする社会的経済ネットワークの 構築
2 国際社会的経済の連帯と行動のための教育プログラムの共同開発
3 国際社会的経済のビジョンを共有し、人的資源の育成のための社会的経済の人的交流プログラムの企画運営
4 国際社会的経済が市場経済、公共経済と調和して発展するような社会的経済発展モデルの開発
5 国際社会的経済の協議体と事務局の運営及び協力のための支援
6 国際機構及び研究所などの誘致及び支援
7 その他、社会的経済の国際協力と関連して市長が必要であると定めた事項
③ 市長は、第2項により国際社会的経済の協議体(以下、“協議体”という)の円滑な運営と活動のために協議体の事務局運営に必要な経費を予算の範囲で支援することが出来る。
第21条(広報及び褒賞)
① 市長は、社会的経済企業について地域住民の理解増進のために、次の各号の措置を講究することが出来る。
1 模範モデルの発掘及び拡散の支援
2 社会的経済企業の製品及びサービスの品質向上、および広報支援
3 専門家フォーラム、ワークショップ開催などを通じた社会的経済企業についての
認識の拡散
② 市長は、社会的経済の活性化のために次の各号に該当する場合にはこれを褒賞することが出来る。
1 自立経営及び地域社会への寄与など模範となる社会的経済企業
2 社会的経済の活性化に顕著な功労があると認定される個人または団体
3 社会的経済の活性化に顕著な功労があると認定される自治区又は公務員
③ 第2項による具体的な手続きは「ソウル特別市表彰条例」による。
第22条(指導・監督)
① 市長は、財政支援を受けた社会的経済企業などにおいて、支援内容にもとづいて支援金が目的通りに使用されているかを確認し、指導・監督しなければならない。
② 市長は、財政支援を受けた社会的経済企業が財政支援金を目定以外に使用した場合には、支援金の交付決定を変更または取消しをしたり、既に交付された支援金を回収することが出来る。
第23条(権限の委任及び委託)
① 市長は「ソウル特別市事務委任条例」の定めるところにより、社会的経済に関連した業務の全部または一部を区庁長に委任することが出来る。
② 市長は、社会的経済の活性化及び生態系の造成のために、この条例で定めている市長の権限に属する事務の一部を法人及び団体などに委託することが出来る。
付則
第1条(施行日)
この法は公布した日から施行する。
第2条(他の条例の改正)
① ソウル特別市社会的企業育成に関する条例を次のように改正する。
第6条第4項をこの条例の第11条に入れ替える。
② ソウル特別市社会的企業の製品の購買促進及び販路支援に関する条例を次のように改正する。
第2条第1号をこの条例の第3号に入れ替える。
第3条(一般的な経過措置)
この条例の施行の前に「ソウル特別市社会的企業育成に関する条例」、「ソウル特別市協同組合活性化支援条例」、「ソウル特別市地域(マウル)共同体づくり支援等に関する条例」、「ソウル特別市自活事業支援に関する条例』の規定によって行われた処分・手続き、その他の行為はこれに該当するこの条例の規定によって行われたことと見なす。
<訳者注>
訳文中の「地域(マウル)企業」「地域(マウル)共同体」とあるのは原文では「マウル企業」「マウル共同体」である。マウルとは韓国の固有語で一般的に「ムラ、部落、里」と訳されるが、適当な訳語がないため「地域(マウル)企業」とした。
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